沖縄県知事選デマ ⑥「M」と呼ばれた人物、マキタ・クニヒデとは誰だったのか - ネットの闇へと消えていったデマサイトの運営者
沖縄県知事選挙の謎サイトと動画コンテンツは bot (自動配信) のツイッターアカウントで拡散されていた。選挙前はあれだけ声高にさけんでいたのに、選挙が終わると、ネット上からすべて跡形もなく消えていった。
2018年8月8日、突然の翁長知事の訃報から、急遽、予定よりも繰り上げて行われることになった沖縄県知事選挙。2018年9月13日に告示され、9月30日投開票、そして圧倒的票差で現在の玉城デニー知事が選出された。
しかし、この県知事選挙では予想通りというべきか、半年前の名護市長選挙に輪をかけた、途方もないデマの暴風が吹き荒れた。そのデマのほとんどが本土から押し寄せたものである。
その沖縄県知事選デマのなかでも、最も手の込んだものが、小沢別荘利殖デマだった。選挙戦当時、当不安クラブでは、選挙戦の中、取り急ぎ二つの検証ブログを書いた。
Part I 時系列でデマの流れを追った
Part 2 謎サイトの動画と創価学会の連絡文書の関連性
その二つのブログで記した時系列をざっと並べるとこうなる。
- 8月22日、謎サイト「沖縄県知事選挙 2018」のドメイン登録
- 9月8日、遠山議員、デマ動画を拡散し始める
- 9月9日、デニー知事が完全否定
- 9月11日、デイリー新潮記事を前日に予告する遠山の謎
- 9月12日、選挙戦スタートの前日、『週刊新潮』がデマ記事放出
- 9月12日、BuzzFeed の謎サイト追跡記事リリース
- 9月12日、午後、謎サイトが遁走する
- 9月12日、「動画を見つけてそれを投稿しただけ」、削除もしないで非常識な言い訳
- 9月14日、変更された動画サムネイルの謎
- 9月12日、公明党大阪市議「辻よしたか」もデマ拡散
- 個人運営にしては、かなり金がかかりすぎの謎サイト ➡ 組織的
- 9月17日、創価学会の沖縄県知事選対策チラシが流出
- 謎サイト動画と創価学会の連絡チラシの不思議な符号
さて、選挙が終わり一年もたってしまったが、デマの暴風が吹き荒れた未曽有の選挙で
その時、どのように BuzzFeed Japan と琉球新報は謎サイトを追い詰めたのか、
今後のためにも、
記憶にとどめておくことは大切だろう。
琉球新報と BuzzFeed は「謎サイト」をどう追跡したのか
新春から始まった
琉球新報の選挙戦検証記事が連続してすごかった。
ネット解析と、直当たり取材も含め、メディア・アウトレットによる本物のファクトチェックというものの真髄を見せてもらっている気がする。
メディアがちょっと本気だすと、これほどの記事がかけるのかという、メディアの可能性と醍醐味を見せてもらっているかのようだ。
それを思うにつけ、なぜ本土メディアは本腰を入れてフェイクニュースと戦わないのか。
いまやバイラルネットメディアにおされ、既存のメディアの存在と存在意義が問われているなか、どのような立場で既存メディアはバイラルなフェイクニュースと対峙する気なのだろうか。
できないのではなく、できることをしない、そんなに飼いならされた既存メディアに、はたして将来的な需要はあるのだろうか。
若者世代の新聞離れが加速するなか、それでも大手メディアが確かな情報のクライテリア (判断基準) として固い信頼を得て復権するためには、読者が求めるファクトの拠り所として、ファクトチェックに力を入れていくべきであると思う。
琉球新報が BuzzFeed Japan の記者に取材し、BuzzFeed の記者が「謎サイト」を追跡した様子を記事にしている。読み返してみたい。
知事選に偽情報、誰が? 2サイトに同一人物の名前 覆面の発信者㊤ 沖縄フェイクを追う~ネットに潜む闇~(1)
2019年1月1日 12:33
2018年11月下旬、オフィスビルが立ち並ぶ東京都港区芝。朝夕には会社員らが川のように流れをつくって行き交う。地下鉄の駅から地上に出てすぐの場所にその建物はあった。
大企業の本社が点在する立地と、周辺のビル群に溶け込んだ外観から集合住宅だと気付く人はどれほどいるだろうか。JRの駅にも近く、列車の音もひっきりなしに聞こえるが、その建物の周辺だけは、なぜか時間が止まったように静かだった。玄関口を入ると、両側にびっしりと並んだ郵便受けが飛び込んできた。10階建てで、住宅部分は独立行政法人が運営するが、すでに取り壊しが決まっている。
「沖縄基地問題.com」のサイトの運営者の住所として登録されていた集合住宅の入り口=東京都港区芝
物件情報によると、3階まではテナントとして利用され、4階以上に約400の賃貸住宅があるとされる。だが、壁に掛けられた居住人の名簿には、半分ほどの名しか残っていない。名簿、郵便受けの名前を丹念に見ていったが、目当ての男性の名はなかった。
虚偽の住所か―。人けのない薄暗いフロアで、しばし立ち尽くした。
11月初旬に発足した琉球新報ファクトチェック取材班は、18年9月30日投開票の県知事選で、真偽不明の情報や中傷的な情報を流した二つのサイトに注目し、取材を進めていた。
「沖縄県知事選挙2018」
「沖縄基地問題.com」
ネット上に残るサイトの情報を追うと、二つとも1人の男性の氏名で登録されていた。ここでは仮に「M」と呼ぶ。港区芝の集合住宅はMが「沖縄基地問題.com」で住所として記載していた建物だ。
「沖縄県知事選挙2018」の登録住所は東京都荒川区東尾久のマンションの4階の部屋になっていた。しかし8年前に取り壊され、今は3階建ての別のマンションが立つ。大家にMの名について心当たりがないか訪ねた。しかし「管理会社に任せているから」と答えるだけだった。
Mが登録していた電話番号に掛けると、一つは女性の声で「違う」と否定された。もう一つの電話番号に掛けると「この番号は現在使われておりません」と機械的なメッセージが返ってきた。
ただ、古い電話帳をめくると手掛かりがあった。9年前に荒川区東尾久の登録住所で、Mと同じ姓名で電話番号が登録されていた。だが、この番号もすでに使われていなかった。実際に、このMがサイトを運営していたのか、第三者に名前や電話番号を使われたのか、分からないまま、消息は途絶えてしまった。
迫っても、迫っても届かなかった「覆面の発信者」。目の前の闇が広がっていく気がした。
告示前に閉鎖 登録者正体追えず
サイト「沖縄県知事選挙2018」で動画がまとめられたページ。現在、見ることができなくなっている
二つのサイト「沖縄県知事選挙2018」「沖縄基地問題.com」は8月下旬に突如として立ち上がった。前者は知事選の候補者の日程や主張などをまとめたサイトを標ぼうし、中立を装っていた。しかし、実態は全く違った。
両サイトで約40本の動画を掲載し、全ての動画は立候補していた玉城デニー氏(現県知事)や、その陣営、故・翁長雄志前知事をおとしめていた。
「現沖縄与党の正体は反社会的勢力だ!」
「翁長氏死去。弔い選挙で沖縄を狂わす!」
見出しには根拠のない情報が並んだ。動画の多くは普天間飛行場や玉城氏、翁長氏の写真を背景に、ゴシック体の文字が流れる様式だ。玉城氏を「違法容認派の危険人物」と記載し「公選法違反」をしているとしていた。基地建設に反対する県民や玉城氏の陣営を「沖縄左翼」を意味するとみられる〝沖サヨ〟と呼び、選挙運動で安室奈美恵さんを政治利用しているとして「バカ丸出し」と切り捨てた。
動画の中はドローン(小型無人機)を使って、上空から撮影する大がかりなものもあった。この動画を国政与党の国会議員がツイッター(短文投稿サイト)で貼り付けて投稿していた。
同サイトについて記事にしたネットメディア「バズフィード・ジャパン」によると、拡散している動画は、3千以上リツイート(再投稿)され、再生が5万回を超えているものもあった。サイトが発信源となり、フェイクニュースが、速く、広く拡散された。
知事選の期間中、1枚のチラシが出回った。サイトの動画と照らし合わせてみると、数カ所で文言が重なり、関連性も疑われた。このチラシは一部の有権者の元にも届いたとみられ、サイトの影響力はネットの世界のみにとどまっていなかった。
通常、サイトをつくる時に「ドメイン」といわれるインターネット上の住所を登録するのが一般的だ。さらに、ドメインを取得する際には登録した人の氏名や住所、電話番号などの個人情報が公表される。
だが、このドメインの情報も、代行してもらえる会社に依頼して、見られなくすることができ、サイト運営者の情報は完全に隠すことができる。
今回の取材で、両方のサイトのドメインから、運営者を追っていったが、両サイトともに氏名、住所、電話番号などの情報を代行会社に頼んでおらず、広く公開していた。〝真の運営者〟は当初から虚偽の登録情報を公開して惑わせ、悪意を持って情報を発信していたのだろうか。
「普通のまとめサイトは、悪質なものを含めて絶対に広告が掲載されているが、広告がなかった。金銭目的じゃないのは明確だ」。このサイトを調べていたネットメディア「バズフィード」の籏智広太記者はこう断言する。では、目的は何なのか。
籏智記者はサイトの背後に「政治的な意図があったのではないか」と推測した。
知事選告示前の9月12日、二つのサイトは突如、姿を消した。動画の閲覧も不能になった。バズフィードの取材がサイトに迫っていた時期と重なっていた。
そして、閉鎖直前にはサイトの登録者が突然書き換えられた。両方のサイトの登録者指名は「M」から「A」に変わり、住所も「山口県」などに変わった。
さらに知事選後、虚偽情報や中傷的な情報を流した複数のサイトやツイッター登録者も次々と姿を消した。インターネットの広い空間でうごめく謎の情報発信者。今もどこかで、沖縄フェイクを流すタイミングをうかがっているのかもしれない。
インターネットの普及やSNS(会員制交流サイト)利用者の拡大で「情報」は身近なものになった。一方で、情報に紛れたフェイク(偽)やヘイト(憎悪)も大量に拡散され、個人を傷つけ、民主主義を破壊している。覆面で悪意の情報を発信する者は誰なのか。フェイクニュースの発信者を追い、沖縄から、大量に拡散される「情報」への向き合い方を探る。
通称「M」、マキタ・クニヒデとは、一体誰だったのか
さて、ここで登場する「沖縄県知事選挙2018」「沖縄基地問題.com」という二つの謎サイトのドメイン解析から浮かび上がってきた人物「M」こと、マキタ・クニヒデとは、いかなる人物であるのか。
実際には、マキタは三つのドメイン登録をしている。
そして9月12日付 BuzzFeed Japan の追求記事の後、Makita の名前は、Arai Taka などに代わり、ネットの迷宮に消滅していった。
また、このサイトは、拡散のために数個のツイッター bot (自動配信) を使っていたが、
沖縄県知事選挙 2018 候補者・日程 知事選速報サイト
2018年8月登録という出来立てのアカウント。最初のツイート日は9月4日となっており、よほど強調したいのだろう、小沢別荘利殖デマの動画が固定されている。
記憶が確かであれば、そのサイトが所有していた小沢別荘利殖デマ動画は二種類。
小沢別荘利殖デマ動画その①
小沢別荘利殖デマ動画その➁
ペン坂ジュニア on Twitter: "【衝撃】#玉城デニー と超豪華別荘の関係
バックアップできていた動画は、このひとつだけ。今では謎サイトの数少ない「痕跡」である。
そして、これらの謎サイト、ツイッターアカウント、動画 youtube アカウント、すべてが続々と消えていった。動いていたツイッター自動配信アカウントも、選挙の前日にピタリと配信をやめ、その後、いつの間にか姿を消していた。
さて、簡単にまとめるとこうである。
1. 広告がひとつもない ← 政治目的、選挙のプロの仕事
2. 二つのサイトのデザインが酷似 ← 同じテンプレートを使用
3. ドメイン解析で判明のマキタの名前や住所が変わる ← 攪乱目的のためのデコイの可能性
4. 小沢別荘利殖デマ動画をツイッターに固定表示 ← サイトの主要目的
5. ほとんど無名の段階で、このサイトから動画を最初に拡散したのは遠山清彦議員
6. 撤収 = 役目が終わるとすべての関連アカウントがネットから跡かたなく消えていった
さて、検証第七弾では、いよいよ、このサイトが拡散した動画と、創価学会の学会員に連絡書類として配られた内部文書とを比較検証する。
いったいそこから浮かび上がってくる事実とは。
この謎サイトの管理者 Makita Kunihide に関連するかもしれない残存物をいくつか集めています。何か情報をお持ちの方は不安クラブ SNS までご連絡ください。
また、最初の時点で数十名ぐらいしかフォロワーがいなかったツイッターアカウントで、相互フォローしていたサイトにこれがある。
そして ! 本体ページはまだ生きている。
【沖縄 観光 旅行】おすすめ人気ランキング100|ホテル・スポット・離島・ビーチ・グルメ
@twfa2qiVhd3SdeI