中国艦船と普天間基地移設問題
2016年9月30日
しばしば、「ネトウヨ」や「ネトウヨと化した政治家」らは、尖閣列島周辺海域における中国艦船や漁船の航行問題と、米海兵隊普天間基地の辺野古崎沖移設計画を一緒に語る。
彼らの言い分は、おおむね、こうだ。
「東シナ海で中国の脅威が増しているのに、沖縄県知事が辺野古移設に反対するのはおかしい」
しかし、ここで「おかしい」のはネトウヨの論理だ。そもそも、米海兵隊の任務や役割を理解していない。
でも、そんな専門的なことを知らない人達からすれば、ネトウヨの意見は「もっともだ」と考えてしまいがちだ。
特に、「日本戦略研究フォーラム」という、なにやら軍事専門機関かシンクタンクのような名称を持つ組織の理事を務める政治評論家の屋山太郎氏が主張すれば、もっともらしく聞こえるのは当然だ。
屋山氏は、『ルイス・リビー氏の「中国の尖閣進出」予言的中―辺野古移設反対の朝日・NHKの解説に「唖然」―』と題した文を平成28年9月28日付静岡新聞『論壇』に寄稿し、BLOGOS や 日本戦略研究フォーラムのHPに転載している (http://blogos.com/article/192217/、http://www.jfss.gr.jp/index.php/home/index/article/id/211)。
今日(平成28年9月30日)、午前中に当クラブが確認した時点では、BLOGOSの閲覧ランキングで上位に入っていた‼︎
屋山氏は、
『中国が本気で南シナ海の岩礁を埋め、軍事基地を造り、東シナ海にも公然と手を出す中で、沖縄県の翁長雄志知事は、未だに辺野古移設反対を貫いている。』と、主張する。
沖縄県が辺野古移設計画を容認、賛成すれば、「東シナ海において中国艦船は航行しない、尖閣列島が乗っ取られる心配がなくなる」とでも主張したいのか?
でも、ちょっと待ってほしい。
米海兵隊が使用する普天間基地は、現在、宜野湾市に存在する。しかも、今現在、米海兵隊の航空基地として運用されている。
それにもかかわらず、上のような主張をするのは、なぜ?
「普天間基地機能の移設であり、〝新基地〟ではない」というのが日本政府の説明だ。
今ある普天間基地の機能が〝今のまま〟移るのではなく、それ以外の、それ以上の「何か」を新しく整備するつもりなのか?
中国の艦船が東シナ海を航行したがらなくなるような「何か」を配備する計画なのだろうか?
尖閣問題と普天間基地移設問題を一緒に語りたいなら、今以上の、何か物凄い「抑止力」が辺野古に置かれるという前提がなければ、辻褄が合わない。(笑)
屋山氏の主張は、米海兵隊の任務や役割というものを説明しながら反論するまでもなく、 米国の有識者が寄稿した小論を読んで確認するまでもなく、この、辻褄が合わない一点だけでも、既に「おかしい」。
また、屋山氏は、福岡高裁那覇支部の判決を不服とした沖縄県を非難した上、〝県民の民意はどうなるのか〟と問うた朝日新聞とNHK番組内での解説員による発言に「あぜんとした」ようだ。
屋山氏、「唖然としている」のは、こちらである。 (笑)
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屋山氏が理事を務める「日本戦略研究フォーラム」の役員。〝大物〟が勢揃いしてます!(http://www.jfss.gr.jp/index.php/home/index/yakuin)
WEDGE Infinity 「南シナ海問題は隠れ蓑か 虎視眈々と尖閣狙う中国」:
(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6222)
ルイス・リビー氏とアーサー・ハーマン氏の小論原文:
(http://www.wsj.com/articles/beijings-next-gambit-the-east-china-sea-1453745380)
ルイス・リビー氏とアーサー・ハーマン氏の小論の和文、WSJ日本語版サイト(有料):
(http://jp.wsj.com/articles/SB10116307791432393383204581505461845336784)